大阪母子医療センター遺伝診療科・研究所 岡本伸彦 先生
HNRNP疾患患者家族会の発展にむけて
ヒトの遺伝子や遺伝性疾患を登録したOnline Mendelian Inheritance in Man (OMIM)のデータベース(https://www.omim.org/)
では2023年12月時点で、疾患や特定の表現型と関連が明らかになった遺伝子が7459個と記載されています。
新規疾患責任遺伝子は徐々に増えています。
指定難病・小児慢性特定疾病では医療費の公的助成がありますが、こうした疾患には遺伝性疾患が多く含まれており、
正確な診断には遺伝子診断が必要です。また、通常の医療の中で診断することが難しい未診断疾患の場合は、
多数の医療機関で診断がつかず、長期間にわたって原因も治療方法も不明で経過している症例も多数存在します。
遺伝子解析技術の進歩により従来の方法では診断が困難であった疾患も原因遺伝子が明らかになってきました。
しかし、原因や病態が不明の「未診断疾患」が多く存在することは医学の重要課題です。
診断未確定の症例は小児病院などの専門医療機関を受診する機会が多いです。
国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED) が主体となり2015年にはじまった
未診断疾患イニシアチブInitiative on Rare and Undiagnosed Diseases (IRUD:未診断疾患に対する診断プログラムの開発に関する研究)は、
「希少未診断疾患」を持つ患者を対象にして次世代シーケンサーなど最新の方法による網羅的遺伝子解析を行い、
疾病の責任遺伝子変異を同定し、診断技術の開発、疾患概念の確立、病態解明から治療法開発を目指す全国規模の研究です。
10年間以上も診断不明であった患者が新たな解析で確定診断に至る例も少なくありません。
長期間にわたって様々な医療機関を受診し、
多くの検査を実施しても診断にたどり着かずに困窮している状態を“Diagnostic odyssey”と表現します。
診断不明状態が続くことは患者家族にとって精神的かつ経済的な負担が大きいです。
Diagnostic odysseyが終着点に達することで、一定の安堵感が得られ、患者家族は次の段階にすすむことになります。
同じ疾患を持つ患者家族の存在は大きな心の支えとなります。
HNRNP遺伝子群もそのような疾患の例です。しかし、まだまだ治療となると長い道のりがあります。
みんなで協力して新しい道を開いていきましょう。
2023/12/11