海外患者会参加報告④:研究参加(Natural History study)

前述していましたが、この会議の会期中に、Natural History studyの評価が行われます。事前にCRIDと呼ばれるIDをWEBで発行して、試験の説明と参加の同意についてのZOOMミーティングを受け、同意の書類に署名してメールで提出します。

また、WEBでの質問票(アンケートのようなもの)で出産時や発達についてなどの質問に答えます。

こちらは定期的に(年に1回ほど)更新する必要があります。我が家は昨年参加しているので、ほとんど完了済みで、WEBアンケートの更新で、娘の手足や顔写真を添付して幾つか質問に回答し更新した程度でした。

当日、会議中に、各家族にそれぞれ個別のスケジュールが渡され、時間になったら評価ルームを訪れます。そのため、評価の時間と重なると講演などは聞くことができません、が、家族が集まる会議中にこうやって評価が行われるのは非常に効率的な方法だと思います。

評価の項目は下記です

  • EEG検査(脳波検査)
  • 神経学的評価
  • 運動機能評価
  • 3D フェイシャル イメージング
  • 採血・尿提出

まず、EEG検査ですが、5分ほどの非常に短い時間で行われます。頭にネットのようなものをかぶるだけです。

ただ、やはり手で取ろうとするのでその間手を押さえて抱っこして、スマホで娘が大好きなお母さんと一緒の動画を見てました。映像やおもちゃなども用意してくれています。昨年も担当してくれたコロンビ大のPini先生はとっても優しい先生で娘のことを覚えてくれてました。

神経学的評価はバイン先生の診察です。非常にありがたいのですが、バイン先生はスマートフォンで日本語の通訳を呼んでくれます。

バイン先生の質問に答えていくスタイルで進み、発達や生活に関することの質問が主でした。その後、娘を直接診察してくれました。

昨年、初めてバイン先生の診察を受け、小児整形外科を受診するように勧められ、H2含めHNRNP疾患のリスクであり、股関節と側わん症のリスクが娘にもあることが判明しました、そこから定期的に受診しています。この1年の間に日本で検査したレントゲン写真を(病院からもらったもの)を今回、バイン先生に提供しました。

今、日本でかかっている診療科(遺伝科、小児神経科、小児眼科、小児整形)で十分か?と質問すると「十分です、大丈夫です」と回答いただきました。親としては研究に参加することで、第一人者の先生に見てもらえるのは非常にありがたいです。

 運動機能評価は理学療法士の先生が診てくれます。おもちゃなどを使って、実際にどのくらいまで動けるかを評価しているようです。

親にも「はいはいできるか?立てるかなど?」質問されます。とても優しい、フレンドリーな先生でした。

この1年の間に作った装具、短下肢を持参し使用方法、装着時間、タイミングなどの確認もしましたが、現在の使用方法で合っていると回答いただき、また今後必要なセラピー、療育などについても相談にのっていただきました。

結果、今はやれていないOT(作業療法)の開始を勧められたので、娘に適した療育ができる場所を探そうと思います。

前述のバイン先生、また他の先生方もそうですが、先生から一方的に質問したり、評価するだけでなく、必ず親に対して「何か聞きたいことはないか?」と聞いてくれるので、親としては非常にありがたいです。あくまで、疾患研究と治療薬開発のために研究に参加しているのですが、うちだけでなく他の家族が継続して参加するモチベーションにもなっているのでは?と感じました。

3Dフェイシャルイメージングは患者だけでなく、兄弟、両親ともに参加します。

HNRNP疾患は疾患ごとに顔の特徴があると言われているので、それを科学的に評価するための検査です。

非侵襲な検査で、画面を数十秒ほど見るだけで測定可能です。また、同時に身長と体重、頭囲についても計測、または聞かれました。下記の写真は兄弟の検査時のものですが、数秒でPC上に3Dの顔が作成されていました。

最後、生体サンプル(血液、尿、唾液、皮膚など)の提供です。こちらはCOMBAINED BrainSIMONS SEARCHLIGHTという希少疾患、遺伝子関連の神経発達障害、自閉症などを研究している非営利の組織によって行われています。

提供は全て任意です。一度提供すれば完了(皮膚、口腔内細胞など)のものと可能であれば、毎年、提供を求められるものがあり血液は毎年です。昨年は、患者である娘とコントロール群として兄弟の血液を提供しましたが、今年は娘と母親である私の血液をコントロール群として提供しました。

また、提供前にWEBのデーターベースにログインして同意と、いくつかの質問(妊娠中、出産時の状況など)に答える必要があります。

定期的に更新が必要です。会場で、COMBINED Brainを創設したBichell博士にお会いし、お話しましたが、非常に穏やかで優しい方です。

会議でも講演されていましたが、末のお子さんがアンジェルマンシンドロームと判明した後に仕事を辞め大学に戻り、神経学のPhDを取得し、アンジェルマンシンドロームの研究を進めた後にCOMBINED Brainを創設したとのこと。そのような経験から、他の希少疾患の親がそのような多大な労力を割かなくても、研究に参加できるようなプラットフォームを開発いただいたのだと、講演を拝聴して思いました。

このように、たくさんの研究者と海外患者会の方々の多大な尽力のもと行われ、確実に治療薬開発につながっているNatural History Studyに参加できて嬉しく思っています。娘は現在のところ唯一の日本人の症例です。また数少ない、アジア人の一人だと思います。研究に少しでも貢献できたら、また日本人を一人でも登録することで、日本とのつながりを作れたらとの思いで参加しました。

日本では、患者が登録するタイプのレジストリ研究の登録率が非常に低い、と耳にしたこともあります。確かに、数多くの質問にWEBであろうと定期的に答えていくのは、希少疾患児、障害児の育児をしながらは負担が大きいと思います。

ただ、一番不足しているのは、時間ではなくで「理解」なのではないか、と思います。

研究は何のために行われているのか、何が目標なのか、どのような可能性があるのか、患者家族は何のために研究に参加するのか、誰がどうやってどれだけの時間と労力をかけて作ってくれたのか、「理解」することが一番重要で、そのための対話の機会を作ることが大事だとこの会議を通して思いました。

4回に渡り報告してきた海外患者会参加報告ですが、以上になります。読んでいただきありがとうございました。